2016年4月28日木曜日

アディティア・ソフィアン新作『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』とこれまでの軌跡

シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス

インドネシアのシンガー・ソングライター、アディティア・ソフィアン。彼の三年ぶりとなるニュー・アルバム『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』がリリースされました。

Adhitia Sofyan (アディティア・ソフィアン) - Silver painted radiance (シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス) 

僕は今回、国内盤のライナーノーツを書かせて頂きました。新作では初めてバンド編成によるスタジオ・レコーディングに挑戦。その結果、より奥行きとスケール感のあるサウンドが生まれました(詳細はライナーノーツで)。今日は過去3つのアルバムについてあらためて紹介したいと思います。

『クワイエット・ダウン』、『フォーゲット・ユア・プランズ』、『ハウ・トゥ・ストップ・タイム』。3つのアルバムには共通項があります。ひとつは、いずれの作品もベッドルーム・レコーディング(いわゆる宅録)という点。そしてもうひとつは、冒頭のナンバーに都市の名前がタイトルとしてそれぞれ付けられていることです。恐らく彼にとってそれらの街は、自身の音楽的世界観を投影できる景色が見えた場所なのだと思います。様々な街の雑踏を背にアディティアがベッドルームで紡いだ珠玉のアコースティック・ポップスは、都市生活者の心をそっと癒すような、静かなシティ・ミュージックのように僕には聴こえるのです。


1stアルバム 『クワイエット・ダウン』


 
一曲目の「アデレード・スカイ」の始まり。その印象的なギターのアルペジオが鳴ってすぐに名盤と分かる、記念すべきアディティアのデビューアルバム。はじめて聴いたとき、その独特な世界観に圧倒されました。彼が奏でるアコースティックで穏やかな音楽には、時を経ても色褪せない繊細なメロウネスが宿っています。基本的には英語詞ですが、現地語で歌われる2曲目の「マミリムゥ」など、名曲多数。


Adhitia Sofyan (アディティア・ソフィアン) - Quiet down - Bedroom recordings Vol.1 (クワイエット・ダウン)


2ndアルバム 『フォーゲット・ユア・プランズ』




先述の「アデレード・スカイ」はアディティアが留学していたオーストラリアの空を思い出して書いたナンバーでした(実際に滞在していたのはアデレードではなくシドニーだったそうです)。自身の活動拠点を題材にした「フォーゲット・ ジャカルタ」で始まる本作は、前作同様、アコースティックギターの調べが切なさと郷愁の念を掻き立てる名作アルバムです。個人的には、2曲目の「アフター・ザ・レイン」が彼の曲の中で一番好き。


Adhitia Sofyan (アディティア・ソフィアン) - Forget your plans - Bedroom recordings Vol.2 (フォー・ゲット・ユア・プランズ)


3rdアルバム 『ハウ・トゥ・ストップ・タイム』 



『クワイエット・ダウン』と『フォーゲット・ユア・プランズ』という二枚の傑作とともに、アディティアは2011年に初来日を果たしました。「トーキョー・ライツ・フェイド・アウェイ」で始まる本作の舞台は日本。前2作を携えて来日したときの情景は、歌だけでなくブックレットのアートワークでも描かれています。上質で親しみやすいメロディーラインは本作でも健在。前作、前々作に比べ、ギター以外の音色も随所で聴くことができます。



Adhitia Sofyan (アディティア・ソフィアン) - How to stop time (ハウ・トゥ・ストップ・タイム)